竹生島
ようやく日が暮れ、陰暦十八夜の月が出て、海上を照らし、社檀もますます輝きました。
まことにめでたい風景でしたので、常住の僧が「これは名高い琵琶です」と、琵琶を差し出してきました。
経正は受け取り、秘曲・琵琶三曲の中から「上玄」「石上」を弾きました。
お宮の中も澄み渡り、非常に趣が出ました。
すると、明神も観応に耐えなかったとみえ、経正の袖の上に白龍が姿を現しました。
経正は、あまりのかたじけなさに、しばらく琵琶を置き、このように詠いました。
ちはやふる神に祈りの叶へばや
しるくも色の顕はれにけり
《竹生島》~平 経正
平家物語より