尊厳と普遍

国も、民族も、文化も、芸術も、宗教も
分断され、体系化され、言語化され、
数値化され、合理化され、消費され
その役割を終える

顕微鏡の中から宇宙に至る生命活動は
混沌し、誕生し、増殖し、
膨張し、循環し、縮小し
その螺旋の中で他と違わずに消滅する

一鑿、一鑿、私は魂を刻む
零れ落ちた人間の尊厳を掬い上げ、
彫刻に閉じ込める
彫刻は記憶し、その魂は永遠に振動し続ける

人間の野生と、歴史と、衝動と、
慟哭と、祈りとを携えて
私は近代への呪術師となる

私は夢想する。
文明が滅び、再び発見されることを。

自光雲五代 加藤巍山

これらの作品は、
平安時代に確立された造仏の技法を用い、
その姿容も仏像の木割り法を基にしています。

喜びや悲しみ、苦しみ、不安…そして希望、夢。
“祈る”という行為は
人類が文字を発見する前から行われていた行為。
これから加速度的にテクノロジーが発達して、
宗教の役割も問われ、
人間の「匂い」が失われていったとしても、
1000年、2000年先もきっと人は祈り続ける。

過去と未来の間(あわい)にある今。
仏と人の間。